ハローハロー

父は車椅子に1時間以上座れるようになったので(もちろんまだ自力じゃ動けないのでベッドから看護師さんに移してもらうんですが)リハビリ室でリハビリが始まりました。肉体的回復は順調なようです。問題はやっぱり失語のほうで、脳の損傷部分から失語は免れない、と言われていたんですがやっぱりいろいろわからないみたい。左手は自由に動かせるんだけど、「人差し指は?」と言われてわからない。その指が「人差し指」という名前だということがわからない。そして、母や私たち姉弟の名前もよくわかってない。家族だということはなんとなく理解しているかもしれないけど、うまく結びついていないというか混乱が見られます。母が「わたしの名前わかる?」ってきくと、すごく申し訳なさそうな顔をして「わからない」と言うらしい。教えるとうんうん、と頷いて「そうだったね」とか「そうだね」とか言うんですって……そういう意味ではいちおう会話は成立していると言っていいのかもしれない。看護婦さんには敬語(ありがとうございます)使うけど私たちには使わないし(ありがとう、だけ)。言葉に関してはとにかく反復で覚えさせるしかない。そうしてるうちに、脳の今まで使ってなかった部分とかが機能し始めて、あるときパチンと回路が繋がる…ってことがあるそうです。
車椅子に乗れるようになった最初の日はたまたま私が立ち会っていたので、押してみますか、と言われて病院の廊下を車椅子を押してぐるぐる歩き回りました。こんなに早く親の乗った車椅子を押すことになるなんてなあ…と思いながら押しました。見晴らしのいい待合室の窓から野球場が見えて、「ねえお父さんあの球場、去年一緒に野球観に行ったよね」って言ったら「おぼえてる」だって。
父の口癖だった「要するに」(話してると30秒に一回は出る)はいつ聴けるかな。あまりにも頻発するからいいかげんうざいと思ってたけど、聴いたら泣いてしまうかもしれません。あの口癖が出た瞬間がきっと父が完全に回復して戻ってきたときになるんじゃないかなあと思う。