イメージの共有

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「キャッチーなタイトルの曲が出ると同人誌のタイトルとして流行る」の話について、ブクマコメントで

2005年12月02日 lu-and-cy 『面白い話。そういや商業誌でも女流漫画家は歌からとったタイトル率が高かったような気がした(山田南平が最初に浮かんだ)。十年以上前の印象だけど』

と頂きました。
山田南平はほとんど読んだことがないのでわかんないんですけど、同人・商業に限らず女性作家は曲名引用が好きな人が多いなあと。(そしてたいてい巻末なんかで「タイトルは××の昔のアルバムからとりました」とか書いてる)
ここでは一応商業は置いておいて、同人の話に限ります。それも主に「パロディ同人誌」(二次創作同人誌)について。


最初にこれを断っておかねば。
曲名引用にもおおまかに分けると

  • フレーズそのもののキャッチーさから使われる(「恋はスリル・ショック・サスペンス」)*1
  • (上に加えて)曲の内容が本の内容・雰囲気に合っているので使われる(「幸福論」)

のふたつになるかと。


昔から「女性作家(女性向け)はタイトルにこだわる人が多い」「男性作家(男性向け)は特にこだわっているように見えない」*2と思っていて、曲名引用もその流れの話なんですが、
男性サークルの(男性向け)同人誌のタイトルで特徴的だなあと思うのが

  • 原作タイトルのシンプルなパロディ*3
  • 「サークル名やペンネームそのまま」、「○○(サークル名)通信」、「月刊○○」vol.1(以下内容に関わらず連番タイトル)

で、特に「○○通信」系のパターンだと「中身のジャンルが変わっても連番のまま続く」っていうのが女性サークルではまずほとんど見かけない。
これは「女は作家でなくジャンルにつく」*4という理由もあると思いますが、「中身」と「タイトル」の親和性というかタイトル込みでその1冊、という意識がやはり強いのだと思う。「ワタシ(サークル)」の本、ではなく「ジャンル(○○×▽▽)」の本、という意識かな。
で、女性サークルで多いパターンだと

  • 原作タイトルの1フレーズを使ったもの*5
  • 曲名引用
  • 曲名パロディ
  • 内容を想起させる詩的フレーズの組み合わせ・「僕らは〜〜する」系

あとはそれこそ椎名林檎的な「漢字+カタカナ単語」で、これはもう伝統芸能というかお約束というか。*6


(気になる方はめろんちゃんとこと快適本屋さんあたりの一覧をくらべてみるとおもしろいかも)


タイトルも込みで、一冊の同人誌として印象を統一したい・ひとつのイメージを作りたい、と思う人が多いから、単なる連番とかではなく「凝る」人が多いんでしょう。*7
で、凝るわりに「曲名そのまま引用」のようなぶっちゃけ安直な方法を取る人がこれまた多いのも、理由としては上記とあまりかわらないものだと思うんです。

曲名引用はなぜ多いのか

結論から言うと
「イメージの共有」が容易だから
「イメージの共有」をしたいから


だと思います。
曲名をつけることで、その元曲の印象や内容(せつない失恋ものとか、アップテンポの青春ものとか)が、説明しなくても伝わるわけで、しかもそのタイトルがフレーズとしてキャッチーなものだったりすると曲の内容そのものを詳しく知らなくても「どんな感じだかわかる」→さらにそれが同人誌の内容やカップリングのイメージに沿っていれば効果増大、雰囲気を作り上げることができるわけです。
とまあ「素敵だな、と思った以下略」とどう違うんだと言われると困るんですけど、引用側はそのフレーズ(タイトル)を「自分のもの」「自分が作り出したもの」だとは微塵も思ってなくて、むしろ「私はこの曲とこのジャンル・カップリングが好き」という「同志」への「これ、いいよね!」という無邪気なアピールも含まれるような気がするのです。
…オマージュっていうの?これ。しかしそれともまた違うような……もっと無邪気で、妄想の共有を求める手段というか……。
言ってしまえば安直な手法なので、あんまりおおっぴらに歓迎されているものでもないと思いますけど。
どうしてもタイトル思い付かなくてヒットチャートから取る人もいるし。


で、なぜ女にそれをやる人が多いのかというと、カップリング妄想は結局共有幻想になるから。
女性向けと言われているカップリング本ってつまり、書き手と読み手の妄想を共有するためのものだと思うのです。


せんせー!一旦下げて書き直したのに大して変わってないよー!論旨、やっぱり飛びまくりだよー!
そもそも「イメージの共有」ってなんだよ!みたいな話、できてないじゃん!
えーとここから「同人女は『イメージソング』を探すのが好き」みたいな話になる…はず?

*1:「恋は〜」は語呂もいいし覚えやすいし、まさにその語感からハイテンションなギャグものとか、ちょい狂気入ったようなドラマチック恋愛ものとかのタイトルに使われてた印象。男性向けでも見かけたなあ。あとは「物は壊れる人は死ぬ 三つ数えて眼をつぶれ」は基本で(笑)川本真琴由来の「ギミーシェルター」はコンスタントに見る。「桃色片想い」「LOVEマシーン」「ちょこっとLOVE」あたりも当時多かった

*2:もちろんこだわってる人もいることは重々承知

*3:他の作品とのダブルパロディ的なものとか。ネギま!ラブひなでラブねぎ!(ネギま本)とかそういう感じの…

*4:ジャンルが変わると買わない読者が多いので連番にする意味がない

*5:パロディとはいまいち言い切れない…。ジャンル初期に多い

*6:おお振りアンソロの「泣き虫オーバースロー」もその流れだろうけどわりとひどいタイトルだと思う。端的に表現しすぎだ!

*7:表紙の紙とか遊び紙とかにこだわるのも女性サークルの特徴