本当に怖いのは

昨日帰りに人身事故に遭遇しました。乗っていた電車が急ブレーキ、ホームの中途半端なところで停まり、窓の外のホーム上の客がざわついているのでこれはもしかして…と思ったら「当列車にて人身事故発生」のアナウンス。一斉にため息の漏れる車内*1。これはしばらく閉じ込められそうだな…とケータイを取り出して状況報告をする客達。私も家に何時になるかわからない旨を伝えようとメールしていたのですが……ホーム上に客が集まり始め、皆一様にホームと車両の隙間を覗き込んでいる光景にぞっ…となりました。ここで初めて「ああ電車の下に身体があるんだ」「それはもしかしてもう死んでるかもしれないものなんだ」「それをこの、ホーム上の人たちは見つけようとしてるんだ!」この「見つけようとしている」は、彼らの顔を見る限り「まだ助かるかもしれないから早く見つけてあげなきゃ」という善意のものには見えなかった。みんな、見たいの?おそらく無事なかたちではないものを?見たいの? もうだめだ。怖い。そのうち私が立っているちょうど下あたりを指差し覗き込む人が増え始め、車両の前に人が集まり始め、「これは…まさか私の下にいるのか…」駅員さんが飛んできて、私の目の前で下を覗きながら無線だかケータイで連絡している。わあこれは確定だ…やめてみんな私からは見えない私の足元をそんな顔で遠巻きに見るな!怖い!「救出活動に入りますのでパンタグラフを下ろします。車内の電灯が消えますがご了承ください」暗くなる車内、どんどん増えていくホーム上のギャラリーとは逆にとにかくこの電車から降りたくてたまらない乗客たち。救急隊員の人たちがなにかこう…黒いシート状のものを持ってきた…どうも私の真下ではなく3メートルくらい横にいるみたい。でもやっぱりこわいことにかわりない。足が震えてくる。早く降ろして!一刻も早くここから遠ざかりたい!車両のドアが開き、近くの乗客が「ここから降りてもいいんですね!?」と駅員に問う。ホーム上にものすごい人の数。どこから来たのこの人たち。人身事故なんだからしばらく電車動かないしなんでここにわざわざ来るの?駅員と救急隊員がギャラリーたちに「下がって!下がって!」と叫ぶ。お許しが出たので一斉にホームに降り、文字通り逃げ出していく乗客たち。私が降りたドアのすぐ横で救急隊員さんたちがなにやら作業をしていたけど一切見ないように振り返らないようにひたすら改札を目指す。地下鉄に乗り換えよう、と頭の中で考えているんだけど、動転していて外に出てから無意味におろおろ歩き回ってしまって地下鉄にたどり着けず、ハッと気が付いたらここは四ッ谷だった(御茶ノ水だと思い込んでいた)。


窓の外で、客達が揃ってホームの下を覗きこみ、それがだんだん自分のいるところに集まってきて、指差す人が増えてきて、駅員さんが来て、みんな私からは見えない私の足元のそれを見ている、という状況が、今まで味わったことのない恐怖でした。起こった出来事そのものよりシチュエーションが本当に恐ろしかった。早くJRは全駅ホームに柵とドアをつけてください。お願いします。

*1:中央線乗客は列車トラブルそのものには慣れている