天国への階段と虚無

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)
GONZOでアニメ化が決定してる*1マルドゥック・スクランブル」以前を描くお話。
なんともやりきれない思いでいっぱいになる。「〜スクランブル」の展開からしてハッピーに終わるわけないのはわかりきったことだけど、ああー。あと裏表紙のあらすじはネタバレしてるから気をつけてね!(まあこれも予想の範疇内なんだけど)
スクランブル」では主人公の少女バロットの敵として登場したボイルドが今作の主人公です。彼がネズミ型万能兵器ウフコックとパートナーを組んでいた頃の話。ウフコックがまだ子供っぽいというか成長過程です。バロットとウフコックもかわいかったけど、ボイルド(ごついおっさん)がウフコック(ネズミ)を掌やら肩に乗っけているところを想像するとかわいいというか微笑ましいというか、でもそんな所々に出てくる微笑ましさが逆に話の悲劇っぷりに拍車をかけているのかもしれません…やりきれない。「スクランブル」は主人公がもがいてもがいて戦って傷ついてそれでも足掻いて見えた先の光を感じるラストだけど、「ヴェロシティ」は(スクランブルに繋がる都合上)ひたすらに混沌へと落ちてゆくのでわりとつらいです。物語にスキっとした後味の良さのみを求める人にはおすすめしません。まあ、完全に救いがないラストというわけでもないんだけど…うーん…。
この人の小説なので相変わらずクリーチャーじみたキャラが山のように出てきます。もうキャラっていうか変態メカですわ。主人公側は一応人間っぽい部分を大半残してるし外見を人外風味に改造しちゃってる人はいないんだけど敵側はモンスターですな。腰から下が車輪とか。フリントが本当に怖くて、出てくるたびにあの「バトルロワイアル」で「ぱららら」が聴こえてきたときの気分になりました。勝てる気がしねー。というか死亡フラグー。
スクランブル」読んでた時はとにかくおっそろしく強くて怖い敵という印象だったボイルドの、仲間思いだったり人間臭かったりちょっとかわいらしいようなシーンがぽつぽつ出てきてそれもまたせつなかったです。とりあえず「スクランブル」のほうを再読しようそうしよう。


ところで文章がなんだかすごい省エネというか、助詞を極端に廃して台本のト書きみたいな書き方になってるんだけど、うぶちんいつからこんな書き方に…?最初は慣れなくて違和感あったけど、後半の畳み掛けるようなショックとぐらぐら揺さぶられる心理描写には合っていたかもしれない。でも決して正統ではないですっていうかこれで賞に応募したりしたら怒られると思う。


黒幕の正体とか、オードリーを殺した犯人だとか、色々と「実はこいつがー!」が含まれている小説ですが、(以下ねたばれ)一番ショッキングだったのはやっぱりクルツでした……。身内の裏切りは勘弁してください…つらいです……というかオセロットがつらいです。犬とご主人って。泣くから。泣いちゃうから。3巻裏表紙で「次々に命を落とす09メンバー」とかネタバレかまされた上に「スクランブル」の状況からしてボイルドウフコックイースター以外はほとんど死んじゃうんだろうな…と思っていたら本当に全滅でした。3巻だけで敵味方合わせて一体何人お亡くなりになったやら。クリストファー退場が予想外に早くて驚きました。ジョージが「クリストファー先生」って言ってて萌え泣いたよ…ジョージといえばしょっちゅうフリントと対峙して泣きそうになってたので心配だったけどまさかクルツにだなんて。うぶちんの鬼!あ、あとウィスパー退場シーンも泣ける。そのあとのフォローも泣ける。
実は最後までフライト刑事を疑っていたのですが、彼は無実でした。ごめんフライト刑事…しかもあのボイルドが「最後の友人」とまで。おおおおおおお(ショック倍増)なんてこったおおおおおおお。確かに彼が生きていればボイルドはあんなに混沌に落ちきることはなかったんだろうな……おおおおナタリアよりいっそ重要人物じゃねーの。おおおおお(ねたばれここまで)
ボイルドとウフコックとフライト刑事にモエちゃってすいませんでした。
オセロット(犬)とウフコック(ネズミ)が初めて外界に出て街の様子をバスの窓からウキウキ眺めているのがとてもとてもかわいくて萌え泣きました。


読むならやっぱり、物語の順番は逆になるけど「〜スクランブル」からどうぞ。そしてヴェロシティのあともう一回戻るといいかもしれない。

*1:http://mardock.jp/ バロット:林原めぐみ…!